どくしょむ

読んだ本からグッときた一節を書き出します。

地下室の手記

ドストエフスキー (訳)江川卓 新潮文庫(1969)

 

・ぼくは意地悪どころか、結局、何物にもなれなかった---意地悪にも、お人好しにも、卑劣漢にも、正直者にも、英雄にも、虫けらにも。かくていま、ぼくは自分の片隅にひきこもって、残された人生を生きながら、およそ愚にもつかないひねくれた気休めに、わずかに刺激を見出している、---賢い人間が本気で何者かになることなどできはしない、何かになれるのは馬鹿だけだ、などと。(8-9p)

 

・いったい自意識をもった人間が、いくらかでも自分を尊敬するなんて、できることだろうか?(25p)

 

・世界が破滅するのと、このぼくが茶を飲めなくなるのと、どっちを取るかって?聞かしてやろうか、世界なんか破滅したって、ぼくがいつも茶を飲めれば、それでいいのさ。(192p)

 

・今日彼女の足に接吻したそのことを根にもって、あすにも彼女を憎みだすことが、はたしてないといえるだろうか?はたしてぼくが彼女に幸福を与えられるのだろうか?(202p)